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番外編 ヤスさんのめいこい娘
「四季の顔に何かついているか?七海、おぃ、七海」
肩を軽く揺すられ、
「ごめん。ぼぉっとして。何でもない」
慌てて首を横に振る七海さん。
「未知と同じ両性だから驚いているだけ」
「本当にそうか?」
「そうだよ」
七海さんは平静を装っていたけど動揺していた。
「兄貴呑みましょう!」
「オヤジが今夜は無礼講だって」
ホロ酔い気分の若い衆がヤスさんに絡みはじめた。
「呑むのはいいがほどほどにしろよ」
鞠家さんが横目でじろりと睨み付けると、
「は、はい」
背筋をぴんと伸ばし慌てて返事をしていた。鞠家さん、若頭としてすっかり箔がついた。
「 十三年前に起きた磐越自動車道のバス事故の唯一の生き残りだ」
「そうなんだ。やっぱり」
「やっぱり?」
「顔写真は公開されていないはずなのにネットを調べればこの子の写真がのっている。そのバス事故にはいろんな噂が今も飛び交っている。あれは事故じゃなくて、殺人だって。卯月さんも気付いているんでしょう。四季はもしかしたら……」
「証拠がない」
彼がきっぱりと言い切った。
「それに今はその時じゃない。真の黒幕が誰かそれをまず突き止めないと。時期が来たら、ちゃんとヤスと四季に説明する。だからそれまで黙っていてほしい」
「分かった。それより卯月さん、未知と四季、どっちが可愛い?」
七海さんが意地悪な質問を彼にわざと投げ掛けた。
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