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番外編 もしかして酔ったフリ?

「酔っ払いの戯言だ。怒るだけ無駄だ。頭の角をしまえ」 「それは分かるけど」 「それ以外と本心かも知れませんよ。裕貴さんがべろんべろんに酔っぱらうなんで年に一回あるかないかじゃないですか?」 すっと戸が開いて橘さんが寝室に入ってきた。 「定員オーバーだ」 彼が警戒心を露にすると、 「見れば分かります。龍成さんが一緒に寝ると言うので毛布を取りに来ただけです」 「信孝と柚と兄妹仲良く川の字になって寝ると言ってなかったか?」 「奏音くんの温もりが無性に恋しくなったみたいです」 「なるほどな」 「話しは戻しますが、裕貴さんも度会さんと同じで確かワクでしたよね?」 「それがね、優真のためにも長生きしたいって急に言い出して節酒をはじめた」 「遼成さんと張り合っているんですね」 「いつもそう。遼成さんの真似ばかりしている。遼成さんが禁煙をはじめたら、裕貴さんも禁煙をはじめし。裕貴さん、もしかして酔っ払いのフリ?」 「いいんじゃないですか。久し振りの兄弟水入らずです。大好きな兄貴を一人占めして思う存分甘えたい時もありますよ。ほっとけばいいんです」 橘さんが押入れから毛布を何枚か引っ張りだすと、それを両手でしっかりと抱きかかえた。 「山村留学の件、私から信孝さんと龍成さんに話しておきますよ」 「何でそのことを知ってんだ」 「たまたま偶然聞こえただけです」 橘さんが何かに気付きチラッと下を見た。 「遥琉、大事なものはちゃんとしまっておかないと裕貴さんに取られますよ」 その言葉に彼がぎくっとした。

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