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番外編 彼の取り合い
ー裕貴、俺がいないことをいいことに未知と兄貴にベタベタと甘えているんじゃないぞー
「もしかして焼きもちか?」
ー誰が焼きもちを妬いているって?ー
図星だったみたいで、りょうお兄ちゃんが語気を強めて聞き返した。
「さぁ~~誰だろうな」
ひろお兄ちゃんはお茶を一気に飲み干すと、湯飲み茶碗をお盆の上にぽんと置いて、彼の膝の上にごろんと横になった。
ー裕貴、喧嘩を売っているのか?ー
「勝てない喧嘩を遼成さんに売るほど俺は馬鹿じゃない。兄貴にいつ甘えるんだって今しかないだろう?こうしていると昔を思い出すんだ。兄貴の膝の上や腕枕で誰が寝るでいつも喧嘩をしていたっけ」
ー二十年にはまだなっていないが、かなり昔のことだー
「ちょっとやそっとのことでは動じないあの橘も千里も、俺たちの仲の良さに唖然として呆れ果てていた」
ーそうだったなー
クスリと思い出し笑いを浮かべるりょうお兄ちゃん。
「一央が未知を目の敵にするのは、兄貴にはどう頑張っても勝てないから、負い目を感じているから、兄貴じゃなく、わざと未知に冷たくあたるんじゃないか、一央の話しを聞いていてそう思ったんだ」
ー兄貴は昔も今も俺たちの憧れのマドンナみたいなものだー
「俺らみんな兄貴が大好きだ。好き過ぎて困るくらいにな。だから未知のことも大好きになったんだ」
ひろお兄ちゃんとりょうお兄ちゃんに好きを連呼され、さすがの彼もどうしていいか分からず、明るくなりはじめた空を見上げながらずずっと何事もないかのようにお茶を啜っていた。
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