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番外編ひろお兄ちゃんのやりたかったこと
「ひろお兄ちゃん、譲治さんね消毒液の匂いが苦手なの。それと湿布の匂いと貼ったときにひんやりするのも苦手なの」
「だから?」
「譲治さんね、僕の言うことは素直に聞いてくれるの」
「鍋山がいる。未知がわざわざ行く必要はない」
ひろお兄ちゃんが譲治さんがいる部屋とは逆方向に歩き出した。
「一張羅の喪服が皺になる」
「別に構わない」
「ひろお兄ちゃん、もしかしてさっきの見てたの?自分だけのけ者にされた。まぜてもらえなかった。だから怒っているの?」
「分かっているならいちいち聞くな」
「譲治さんの怪我の手当てをしたら彼と龍成さんみたくひろお兄ちゃんともハグする。それならいい?」
ひろお兄ちゃんの足がピタリと止まった。
「嘘じゃないよ。そんなに疑うなら指切りげんまんしよう」
じっと、それこそ穴が空くくらい顔を見つめられた。
「分かった」
ボソリと呟くとくるっと体の向きを変えて元来た廊下を戻り、譲治さんがいる部屋に向かった。
「達治がな、譲治は聞いてもいないのに未知の話しばかりするそうだ。話しぶりから姐さんが好きで好きで、とにかく大好きだというのが伝わってくる。未知に感謝していた。達治に代わり礼を言う」
「僕は何もしてません」
首を横に振った。
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