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番外編 ごめんね
「大切な人?」
譲治さんの顔は恐怖でひきつり、怯えるばかりで柚さんの問い掛けに一切答えようとはしなかった。
「さっきも言ったけど叩かないわよ。叩いたら青空のビンタが飛んでくるわよ」
「女の顔や頭を叩くほどまだ落ちぶれてないぞ。駄目なくらいわきまえているぞ」
「あら~~見た目と違い紳士なのね、意外だわ。蜂谷、青空といると飽きないでしょう?」
「分かっているならいちいち聞くな。仏さんは譲治の妹の希実だ。まだ二十歳にもなっていなかった。詳しいことは信孝と龍成に聞け。譲治には聞くなよ。もう二度と会えないのは理解しているのが、まだ心の整理がついていないんだ。パニックを起こす」
「蜂谷は譲治の保護者みたいね。口振りから分かるわ。譲治が心配なのね。もちろん青空もね。だから、そんなに睨まないでよ」
ぷぷっと柚さんが笑った。
「もしかしてこの子……」
柚さんは希実さんの顔を見るなりハッとして息を飲んだ。
「ごめんね譲治」
「わ、わ、わ!」
突然柚さんに抱き締められ、譲治さんが驚いたような声をあげた。
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