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番外編ごめんね
「俺は本当はイチといたかった。なのにあの人は母親の言うことが聞けないのかとあとが残るくらい強く手を掴んで俺を車の中に押し込んだんだ。柚さんに手を引っ張られ痛いと泣き叫ぶ幸を見ていると昔の俺を思い出すんだ。辛いんだ。涙が出てくる。でも俺は男だから泣けない。柚さん頼む。幸には俺と同じように悲しい思いをさせたくないでくれ。母親を嫌いな子にさせないでくれ。あの人が俺を連れ出しのは金のため。あの人もあの男も達治と希実ばかり可愛がる。実の子どもだから当たり前か。俺は二人に愛された記憶がない。すぐぶん殴るし、縛られて暗い所に何度も入れられた。飯もろくに食わせてもらえなかった。学校もほとんど行かせてもらえなかった。楮山のところでも同じ。怒鳴られて叩かれてばかりで何も変わらなかった。俺は捨て駒。人として扱ってはもらえなかった。オヤジと姐さんに出会い俺ははじめて自分の居場所を見付けた。山村留学させるのは柚さんから幸やめぐみや優輝を奪う為じゃない。それだけはわかって欲しい。柚さんはここに来て何回子どもたちの笑顔を見た?何回子どもたちをこんなふうに抱き締めてあげた?」
「え?」
譲治さんの問い掛けにギクッとして顔を上げる柚さん。
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