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番外編ごめんね

「姐さん!」 息を切らしながら駆け込んできたのは喪服姿の壱東さんだった。 「お帰りなさい。どうしたんですか?そんなに急いで」 「伜が迷惑を掛けたようですみませんでした」 そのまま庭に正座すると額を砂利に擦り付けながら深々と頭を下げられたから驚いた。 「壱東さん頭をあげてください。ズボンが汚れます」 「さっき青空さんとヤスさんたちから譲治のことを聞いて。血の気が引きました。本当に申し訳ありませんでした。どんな理由があるにせよ姐さんの膝枕で寝るなど100年早い」 「説明すると長いんですが、譲治さん一度だけ希実さんに膝枕をしてもらい耳掃除をしてもらったみたいなんです。譲治さんは他人に耳を触られるのが嫌い。くすぐったいのが気持ち悪いみたいで。痒くて我慢できないと言われたので。たまにはご褒美もありかなって………」 壱東さんの背後から彼が気配もなく姿を現したものだからぎくっとした。もしかしてさっきの話し聞かれた?冷や汗が出てきた。 「おぃイチ、頭を上げろ」 彼のドスの効いた低い声があたりに響いた。

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