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番外編ごめんね
「イチ、返事!」
彼の尖った声に壱東さんがびくっと肩を震わせ「はい!」と大きな声で返事をし顔をようやく上げてくれた。額からは血が滲み出ていた。
「壱東さん、血……」
サンダルに履き替えて庭に下り、壱東さんにたまたま偶然手に持っていたタオルを差し出した。今伝えなきゃ、後悔しても遅いもの。
「柚さんに抱き締められて譲治さん泣いていました。お母さんに抱き締めてもらった記憶がないから戸惑い半分、嬉しさ半分で涙が止まらなくなったそうです。譲治さん、壱東さんに会っても顔を思い出すことは出来なかったけど肩車してもらった記憶はおぼろげだけどあると話していました。今からでも遅くないです。譲治さんを抱き締めてあげてください」
「姐さん譲治は?」
「午前中から仏間にいます。希実さんの遺影を抱き締めて、天国に行けるように神様に祈っています」
「仏間に行ってきます。譲治をこの手で抱き締めてやります」
壱東さんが何度も石に躓き転びそうになりながら仏間へと走っていった。
「ごめんなさい遥琉さん。余計なことをして。それと譲治さんのことを言うのが遅くなって本当にごめんなさい」
怒られる前に彼に謝ろうと思い頭を下げようとしたら、ひろお兄ちゃんにその必要はないと止められた。
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