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番外編ごめんね

「譲治は蟻を観察するように、柚のこともちゃんと見ていたんだな。だから、ここに来て何回子どもたちの笑顔を見た?何回子どもたちをこんなふうに抱き締めてあげた?だからその台詞が自然に出たんだろう。譲治の観察眼はずば抜けている」 柚さんは譲治さんのこの二つの問い掛けに返す言葉が見付からず黙り込んでしまった。認めたくないけど一度もない。柚さんは絶句し顔を両手で覆った。生きていれば何度でもやり直せる。俺の母親は生きているか死んでいるか分からない。柚さんはいい。だって可愛い天使が三人もいる。譲治さんの言葉に柚さんは子どもたちを山村留学させることを決意した。 「鍋山、譲治はちゃんとお前との約束を守った。たいしたもんだ。親子の仲直りが終わったらうんと褒めてやれ」 「はい!」 庭の隅っこに控えていた鍋山さんが直立不動で大きな声で返事をした。その直後、 「何できみがここにいんだ!」 壱東さんの驚いたような声が聞こえてきた。 「何でいるんだと聞かれてもな」 「譲治が好きだから側にいるに決まっているだろう」 彼とひろお兄ちゃんが目を合わせるなりくすりと笑んだ。

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