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番外編覃さんは神出鬼没
「俺を探しているタクシー運転手がいると聞いたことがある。そうかイチのことだったんだ。やっと理解した。探してくれてありがとう。これからなんと呼べばいい?イチでは変だろう」
「今まで通りイチでも、父さんでも、父ちゃんでも、親父《オヤジ》でも何でもいい。好きに呼んだらいい。あ、でも、パパだけは勘弁な」
「パパって呼んだ記憶しかないから、パパって呼びたかったのにな。残念だ。親父は駄目だ。俺のオヤジは卯月さんだけだ。俺の姐さんは未知さんだけだ。だからこれからはイチのことを父さんって呼ぶ。なんか照れるし、恥ずかしい。でも嬉しい」
「希実が成仏出来るように毎日線香をあげて手を合わせよう」
希実さんの遺骨は分骨され、壱東さんと達治さんがそれぞれ手元に置いて供養することになった。
「泣きすぎだ」
彼がハンカチで涙を拭いてくれた。
「泣いた顔も可愛いからますます未知のことが好きになる。困ったもんだな」
微かに口角をあげて彼がクスリと笑った。
「決めた。俺も壱東のことをこれからは父さんと呼ぶことにする。息子が三人だ。嬉しいだろう?」
「は、はい。嬉しいです」
顔をひきつらせながらも大きく頷く壱東さん。
「いや、四人だ………」
己の失言に気付いたのかハッとする譲治さん。間違えた。慌てて首を振り否定したけど彼が聞き逃すはずがなかった。
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