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番外編火事場の馬鹿力

「ええと」「うーん」などためらいの言葉やあやふやな口調で返事をする譲治さん。話しながら次第に声が小さくなっていった。 「達治の妙によそよそしい態度に何か隠しているとは思っていたが、やはりそうだったか」 ひろお兄ちゃんの背後から龍成さんがぬっと現れた。 「母さんに怒られる。あの人に怒られる。誰にも話さないって約束したのに。どうしよう。どうしよう。また叩かれる。痛いのは嫌だ。嫌だ」 「譲治、落ち着くんだ」 頭を抱えパニックに陥り壱東さんの腕のなかで暴れる譲治さん。 「覃頼む。助けてくれ」 「助太刀か?もちろんいいぞ。触り放題だからな」 覃さんが譲治さんを何とか止めようとしたけれど、 「これが火事場の馬鹿力というヤツか。噂には聞いていたが凄いな。細い体にどれだけのパワーを隠しているんだ。俺のマイスイートハニーは」 顔をぺしぺしと叩かれたり爪で引っ掻かれたりと思わぬ抵抗にあった。彼やひろお兄ちゃんが助太刀しようとしたら、ドサッと鈍い音がして。譲治さんが覃さんの腕のなかに倒れ込んだ。 「案ずるな。気絶しているだけだ」 「覃さんありがとう」 壱東さんが肩で息をしながらふらふらと畳の上にへたり込んだ。

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