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番外編 りゅうせいさんとゆずさんをおくるかい
信孝さん家族が到着し、マイクを彼から渡された一太と奏音くんはそわそわと手わすらしながら、首の後ろを擦りながらも、
「これからりゅうせいさんとゆずさんを送る会をはじめます」
堂々と挨拶することが出来た。
「コップもって下さい」
「かんぱいするよ~~!」
めぐみちゃんと幸ちゃんもにこにこの笑顔だった。
ひろお兄ちゃんはしゅんとして肩を項垂れていて、心ここにあらずだった。というのも、ついうっかりともう二、三日福島に滞在すると漏らしてしまい、本部の会合よりそっちが優先なのかと遼成さんにみっちりと絞られたのだ。
「龍一家には若頭のノブがいるから、組長が二、三日留守にしても大丈夫だ。なるようにしかならない。いちいち気にするんな」
彼がひろお兄ちゃんを宥めていると、
「オヤジ、どういうことだ?」
何も聞いていなかった信孝さんが目をつり上げて僕たちのところに移動してきた。
「優真が家に帰りたくないと押入れに立て籠って大変だったんだ。言うのが遅くなってすまない。親父と茨木さんが龍を見送るためにこっちに向かっているし、たまには親子水入らずも悪くないだろう」
「それは構わないが……」
むっつりした表情でちらちらとひろお兄ちゃんを見る信孝さん。唇をぎゅっと結んだ。
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