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番外編弓削さんの好きな人
弓削さんとヤスさんを誰よりも知る柚原さんがお義父さんたちに呼ばれた。柚原さんに聞いたほうが手っ取り早いとなったみたいだった。
「ヤスは弓削っ子です。弓削が先に所帯を持つ前に自分が所帯を持つ訳にはいかないと言ってました」
「それはあくまでもうわべの口実だろう。何を隠しているんだ?」
「別に何も隠していません」
「本当か?」
度会さんに質問責めにあった柚原さん。一貫して何も知らないと答えた。
「会長が薄々勘づいている。ということはオヤジはもうすでに知っているということか。参ったな」
逃げるように台所へ熱燗を取りに行った柚原さん。戻ってくるなり深いため息をついた。
柚原さんに声を掛けようとしたら、
「弓削が帰ってきたらおのずと答えが出る。あとは当人同士の問題だ。外野が口を挟むべき問題じゃない。それまでそっとしておいてやろう」
彼にそう言われ、色恋沙汰にはかなり鈍感な僕でも何となくだけどぴんときた。
「未知、まだしーだぞ。誰にも言うなよ」
彼が人差し指を唇の前に立てると、くすりと悪戯っぽく笑んだ。
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