2822 / 4015

番外編 柚さんの目を覚ましたものは

肩をがしっと両手で掴まれ、穴が空くほどじっーと見つめられた。 「やっぱりそうだ」 「え?何が?」 「何がじゃない。惚けるな。前髪自分で切っただろう」 「なんで分かったの?」 「俺の目は節穴じゃないぞ」 「もしかして曲がってる?」 慌てて前髪を指で整えた。 「だって目に入ってかからしいから、さっき手を洗うついでに切ったの。といってもちょっとだけだよ」 「明日心と裕貴を連れて美容室に行って来い。ついでに何か旨いものを食ってこい」 「でも……」 「一太たちは小学校に幼稚園だ。太惺たちは俺がみているから。たまには息抜きをしてこい」 「本当にいいの?」 「いいに決まってる。毎日頑張っているんだ。たまには自分に褒美をやらないと参ってしまうぞ」 大きな手で頭をぽんぽんと撫でられた。 「青空、そんな面するな。姐さんが置いていくとでも思ったか」 「俺の姐さんに限ってないな」 「だろ?」 今にも泣きそうな顔をした青空さんを宥める蜂谷さん。 柚さんが笑っていた。 こんなにも笑う柚さんを見るの、初めてかも知れない。 「あ、ママいた!」 めぐみちゃんの手をぐいぐいと引っ張り幸ちゃんが駆けてきた。 「ママきれいだね」 「うん。きれーー!」 ぴょんぴょんと跳び跳ねてそりゃあもう大喜びだった。 「ママ、いってらっしゃい」 「うん、行ってくるね」 柚さんは目に涙を浮かべながら二人の頭を撫でた。 「優輝」少し離れたところに立っていた優輝くんを見付けるなり柚さんは駆け出して、ぎゅっと抱き締めた。

ともだちにシェアしよう!