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番外編柚さんの目を覚ましたものは
「お願いだから逃げないで。ママが悪かった。ごめんね優輝」
優輝くんはおっかなびっくり両手を柚さんの背中に回した。
「元気でね母さん。めぐみと幸はぼくが守るから」
「お願いね」
「ゆうきに任せて」
「大好きな未知さんのこともお願いね」
「うんじゃない、はいだ」
えへへと照れながらも満面の笑みを浮かべる優輝くん。
柚さんも我が子の成長を嬉しそうに見つめていた。
「卯月さん、瀧田さんを改心させることは出来ますか?」
玄関に向かい歩き出した柚さんの足がふと止まった。
「子どもの幸せを願うなら変わることは出来る。いつまでも楽なほうにばかり逃げてもいられない。一番いいのは環境を変えることだが、海翔の母親は瀧田に依存している。瀧田は一回り近く年上だがかなりの資産家だ。苦労して育てた息子がいまだに行方不明にも関わらず探そうともしないし、貧乏で惨めな生活はもう懲り懲りだと言って瀧田の言いなりだ」
柚さんがバックから革で作った小銭入れを取り出すとそれを彼に渡した。
「瀧田さんが違法薬物を所持していないか捜査官が病院に来たの。でもどれだけ調べても出てこなかった。これは瀧田さんが直前に男子トイレのゴミ箱に捨てたものよ。中は見ていない。これ、よく見るとかいとって名前が刻まれているの。行方不明になっている海翔っていう子が作って母親にプレゼントしたものだと思う。私が言っても説得力がないけど、こんな大切なものをいとも簡単に捨てるなんてどうにかしている。その子に返してあげて」
蜂谷さんが柚さんに駆け寄り、ジッパー付きのビニール袋をポケットからすっと取り出した。
「ここに入れろってでしょう。分かってるわよ」
柚さんは素直に従った。
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