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番外編 息子を頼む
ぼく、男の子だもの。泣いたら一太くんとめぐみちゃんたちに笑われるから絶対に泣かない。強がっていた奏音くんだったけど。刻一刻と別れの時間が迫ってくると、抱っこ。抱っこ。と抱っこをねだりひっつき虫くっつき虫のように龍成さんから片時も離れようとはしなかった。
「まるで火の玉を抱っこしているみたいだ」
龍成さんの脇の下に手を入れてコアラのようにしがみつく奏音くん。たくさん我が儘を言って困らせて、たくさん甘えて、たくさん泣いて。穏やかな寝顔で親指をしゃぶりながらすやすやと眠っていた。
「そのまま連れていったらどうだ?」
「そうしたいが、まずは養子縁組が先だ。あと一ヶ月で夏休みに入る。もう少しだけ我慢してくれよ。龍パパ奏音のこと、絶対に迎えに来るから、一緒に光希ママと遼兄貴に会いに行こうな」
奏音くんの額の汗を手で拭う龍成さん。頬っぺをおでこにぴたっとねばすと、いとおしむように優しくスリスリした。
「兄貴、息子を頼む」
「おぅ、任せておけ」
後ろ髪を引かれるおもいで彼に奏音くんを引き離すと、彼に託した。
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