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番外編砂糖菓子のような甘いキス

「未知の胎内《ナカ》に入りたいってコイツが煩いんだ」 布越しでもはっきりと分かるくらいそれは大きく膨らんでいた。 その直後だった。 がらっと戸が開いて、ひろお兄ちゃんが乱入してきたのは。 「兄貴」 「うわぁーー来るな!ただでえ暑苦しいんだから。てか、裕貴。てめぇーー」 「俺と兄貴の仲だろ?水臭いな。減るもんじゃないし別にいいだろう」 ひろお兄ちゃんが彼に抱きついた。 僕は取るのも取り敢えず慌てて毛布に潜り込んだ。 彼の肩にしがみつき、ものの五分で寝落ちするひろお兄ちゃん。 「嘘だろ。普通この状況で寝るか」 ちょっとやそっとのことでは動じない彼もかなり困惑していた。 「朝早くから忙しく動き回っているんだもの。葬儀に参列して、送る会に参加して、疲労困憊なはずだよ。遥琉さん、あの……」 ショーツを返してと言おうとしたら、 「あれほど抜け駆け禁止と言ったのに」 今度は信孝さんの声が廊下から聞こえてきたからドキッとした。布団から出るにも出れなくなり、頭から毛布をかぶり寝たフリを決め込んだ。 「何だまだ帰ってなかったのか」 「裕貴のことだ。俺の居ぬ間に兄貴を独り占めすると思ったんだよ。兄貴は姐さんとみんなの兄貴なのに」 「妬いて、拗ねて……でっかい子どもが二人も……参ったな」 彼が大きなため息とともに独り言を漏らした。 「一分待ってくれ」 彼が丸めて懐に忍ばせておいたショーツをその隙に返してくれた。 そのあと信孝さんに手伝ってもらいひろお兄ちゃんを布団の上に上に寝せる彼。額は汗でびっしょりになっていた。

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