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番外編鞠家さん、悪戯される
背後から数回カシャ、カシャッと、シャッターを切る音がした。
「橘、柚原、二人して何してんだ」
「何って見て分からないか?」
「写真を撮っているんですよ。たいくん、ぐるぐるがとても上手に描けましたの記念のです」
「は?」
一瞬だけ目が点になる鞠家さん。
「いいか、まだ顔を洗うなよ」
「はい、はい」
鞠家さんはかなり困惑していた。
「二人の親バカぶりは兄貴といい勝負かもな。陽葵もそう思うだろう?」
くくくと声を出して笑うひろお兄ちゃん。その時だった。
がらっと浴室のドアが開いたのは。
「上がってもいいか?ゆでたこになっちまう」
腰にタオルを巻いた彼が顔を出した。
「兄貴たちが風呂に入っていたことをすっかり忘れていた」
「おおかたそうだろうとは思っていたよ。橘、使って悪いがそこのバスタオルを取ってくれ。四枚あるはずだ」
「未知さんをほっといて、ずいぶんとまぁ、呑気なものですね。飽きられるのも時間の問題ですよ」
「俺の未知に限って……いや、待てよ。頼む。それだけは言わんでくれ」
橘さんの一言がよほど効いたみたいで、かなり動揺していたみたいだった。
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