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番外編鞠家さん、悪戯される

「オヤジ、呑み直しましょう」 二次会の真っ最中の若い衆に捕まらないように広間の前を抜き足差し足忍び足で素通りしようとした彼だけど、佐治さんや若い衆にすぐに見付かり捕まってしまった。 「オヤジ、俺らのお悩み相談に乗ってくださいよ」 「お前らに悩みなんてないだろう」 「ありますよ」 「どうしたら姐さんみたいな彼女が見付かるとか」 「そうそう」 酔っ払いの相手は慣れている彼。 いちいち怒ってもしゃなぁいし、くどくど注意しても、これだからおっさんは……と言われるだけだから、まぁ、たまには愚痴くらい聞いてやるか。 三人お揃いの浴衣に身を包み、ひろお兄ちゃんと信孝さんと並んで座ると、眠り眼を擦りながらも、夜が更けるまで若い衆の話に耳を傾けた。 僕はというと布団に潜り、明かりを落とした寝室で心さんと七海さんと眠くなるまでとめどない話しに花を咲かせていた。 「そういえば未知、知ってた」 「何をですか?」 「昔々柚原とヤスがね、弓削を取り合って取っ組み合いの喧嘩をしたって話し。裕貴さんと信孝さん。暇さえあれば兄さんの取り合いをして喧嘩をしているでしょ?あんな感じ。しょうもないことでしょっちゅう喧嘩をしていたみたいだよ」 「そんなことがあったんですね。初めて知りました」 「千里と蒼生から聞いたから間違いない。もっと聞きたい?聞きたいよね?」 「えっと、その……」 ぐいぐいと迫られ、思わず頷いてしまった。

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