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番外編伊澤さん、焼きもちを妬く
「もしかしてまずいことをしたか?」
胸を抉られるほどの自責の念に表情を曇らせる度会さんに、
「大丈夫ですよ」
ひろお兄ちゃんが声を掛けた。
「呑気に言ってる場合か。もしもだ。夫婦の仲に亀裂が出来たらどうすんだ?」
「そのくらいで亀裂は入りませんよ」
「そう言い切れるのか?」
「そうじゃなかったら、だてに三十年片想いなんかしていませんよ。根岸さんと伊澤さんには確固たる信頼関係と深い絆があります」
「なるほどな」
「渡会さんってそんなに心配症でしたっけ?昔はなるようにしかならない。そう言ってど~~んと構えていたような。気に障ったらすみません」
「謝る必要はない。俺もそれだけ年を取っということだ。それに守るべき大切な存在が増えたからな」
「じぃじーー !」
度会さんを見付けるなり、満面の笑みを浮かべ幸ちゃんが駆けてきた。
「おはよう幸」
「はよーー」度会さんの足にぎゅっとしがみつく幸ちゃん。
「朝御飯を食べて保育所に行こうな」
「うん!」
ぴょんと跳ねた前髪を手櫛で直しながら、愛しそうに頭をぽんぽんと撫でた。
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