2845 / 4015

番外編恐怖、再び

「悪い、遅くなって。渡辺に声を掛けられてな。しばらく立ち話しをしていたんだ。運転手の男はテウによく似ていたそうだ。サツが行方を追ってる」 彼が戻ってきたのは一時間後だった。 「保護されたあとの千夏と小夏の情報は何一つ入ってこない。元気ならそれに越したことはないが……」 彼が表情を曇らせた。 睦さんが千夏さんと小夏さんに何度面会を申し出ても断られ、会えないならと手紙を書いても未開封で送り返される。実の親子なのにな、睦さんが不憫だ。彼がそんなことを漏らしていたことを思い出した。 「用心に越したことはない。颯人にぐれぐれも気を付けろと連絡をしておくか」 彼がスマホをジャケットの胸ポケットから取り出し、メールを打とうとしたら、パパ、電話だよ~~電話。早く出ないと切れちゃうよ 一太の声の着信音が鳴り響いた。 「噂をすれば影とはよく言ったもんだな」 どうやら電話を掛けてきたのは颯人さんみたいだった。 「遥琉さん出ないの?」 「出るよ。ただいまのキスをしたらな」 「へ?」 何かの冗談かと思ったけど、彼の顔がぐいぐいと近付いてきて。おでこにかかる前髪を左右に分けると、ちゅっと軽くキスをしてくれた。 「顔が真っ赤だ。可愛いな」 くすりと笑うと、 「颯人、待たせて悪かった」 スマホを耳にあてた。

ともだちにシェアしよう!