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番外編不吉な予感

ーこれ見よがしに見せ付けなくても、オヤジと姐さんが仲がいいのは分かるよ。柚の前でもこれでもかってくらいにいちゃついていたって龍成さんから聞いた。ご馳走さまー ふぁあ~~と声が漏れてきた。まだ暗いのに電話誰からって睦さんの気だるそうな声も。 「寝ていたところを起こして悪かったな。福島は梅雨の合間の雲一つない快晴だ。カーテンを開けて外を見ろ。朝から汗ばむ暑さだ」 ー朝方寝たばかりで……何を馬鹿正直に答えているんだ俺は……すみませんー 「いいってことよ。新婚さんだからな、今が一番楽しいときだろうよ」 「はい」颯人さんがはにかみながら笑っていた。 「世間話はこれくらいにして、俺に用があったんだろう?」 ーはい。昨日の夜九時過ぎに、千夏の代理人だという弁護士から電話が突然掛かってきたんだ。睦が今まで二十回以上母親に会いたいと面会を申し出ても門前払いの塩対応だった癖に、手の平を返したように、睦に会いたい、これからは睦の世話になりたいと。それで橘なら何かいいアドバイスをしてくれるんじゃないかと思って。姐さんの許可をもらおうかと思いオヤジに電話を掛けたんだー 「そうか、なるほどな。ちょっと待ってろ。橘を探してくるから」 「僕が行く」 「いいよ、子どもたちが待っているんだ。早く戻ってやれ。その気持ちだけありがたくもらっておく」 僕の頭をぽんぽんと二回撫でると、颯人さんと会話をしながら橘さんを探しに向かった。

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