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番外編不吉な予感
「だからみなカミさんを愛し、今を精一杯生きている。裕貴、オヤジを見てみ。寝ても覚めても姐さんのことしか考えていない。まわりにいる俺らが恥ずかしくなるくらい朝から晩まで姐さんにねっぱっているだろう」
「確かにそうだな」
ひろお兄ちゃんがくすくすと愉しそうに笑った。
ちょうどレッカー車が来ていて作業をしていた。警備担当の若い衆が腕を前で組み鋭い目付きで作業の様子をじっと眺めていた。
「カタギならわざわざ背中に刺青は入れない。あの男、どこかで見たことがある。裕貴、姐さんと心を早く車に」
「分かった」
刑事を辞めたとはいえ、その眼力はまったく衰えていない鞠家さん。ひろお兄ちゃんに急かされ心さんと一緒に後部座席に乗り込んだ。
「壱東さん、お世話になります」
ハンドルを握る壱東さんに向かい軽く頭を下げると、
「勿体ないです」
壱東さんが照れながら頭を掻いた。
ひろお兄ちゃんが助手席に乗り込むのを待って車がゆっくりと走り出した。
「一瞬だけですが逃走した運転手の顔を見たんです。何て言っていいか分からないですが、鳥肌が立ちました。とにかく怖い、怖いんですよ」
ハンドルを握りながらあたりを見回して怯えていた。
「イカれたサイコ男か……そんなところだろう」
「裕貴さん、あの男は普通じゃない。もし、もしですよ……」
「壱東、まずは落ち着け。運転に集中してくれ。鞠家たちが後ろから付いてきているから大丈夫だ」
壱東さんがちらっとバックミラーを確認した。
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