2851 / 4015

番外編不吉な予感

駅に向かう幹線道路は工事中のため片側交互通行になっていて渋滞していた。 「裕貴さんは幽霊を信じますか?」 「どうした藪から棒に」 「いえ、その……やっぱりいいです」 「信じるも何も、藍子とあやみと希実の幽霊をみんな見ているからな。信じるしかないだろう」 「佐治さんたち若い衆の話しだと、深夜一時過ぎに五十代くらいの女性が度会さんの家を恨めしそうに見つめているのを何度か目撃したそうです。佐治さんが声を掛けようと近付くとすっと消えたそうです。腰から下がなかったみたいです。顔の印象を聞いたら穂香……私の元妻の名前です。よく似てました。穂香はどこかで生きているとずっと信じてきました。穂香がいなくなったのは希実がまだ中学生だった五年くらい前です。難しい年頃の娘を放置して何をしてんだと、娘は死んだんだぞ。なんで死んだか分かるか、穂香を怒らないと気が済まない。でももしかしたら穂香はもうすでにこの世にはいないかも知れません。譲治や希実に一言でいいから謝ってほしかったのに……」 壱東さんは悔しさに声を震わせ、袖で涙を拭った。

ともだちにシェアしよう!