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番外編不吉な予感
「兄貴にはそのことを相談したのか?」
「いえ」
壱東さんが首を横に振った。
「オヤジには譲治のことで迷惑ばかり掛けています。ですからこれ以上迷惑を掛ける訳にはいきません」
「兄貴は迷惑だなんてこれっぽっちも思っていない。いいか、壱東」
ひろお兄ちゃんが前をじっと見つめ言葉を続けた。
「ヤクザのお抱え運転手なんて命がいくつあっても足りない。常に危険と隣り合わせだ。それなのに快く運転手を引き受けてくれたと感謝していた。これも何かの縁だ。壱東と譲治が一日でも早く新しい生活に慣れるよう組あげて応援してやろうって。だから遠慮せずに何でも兄貴に相談したらいい」
「はい」
「どうだ?ここでの暮らしは?」
「姐さんも大姐さんも菱沼組の皆さんも余所者の私に優しくしてくれます。お世辞抜きで本当に良くしてくれます。駅前を歩いている人よりも車の数のほうが多いです。バスは走ってますが車がないとどこにも行けません。旨いものが沢山あります。福島弁はまだちんぷんかんぷんですが」
「そうか」
ひろお兄ちゃんがくくくと愉しそうに笑い出した。
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