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番外編不吉な予感
「しかし参ったな」
「どうしたさっきからため息ばかりついて。オヤジ抜きで両手に花なんだ。もうちょっと嬉しそうな顔をしろ。大好きな妹とカミさんに愛想をつかれても知らんぞ」
「そ、それだけは駄目だ。絶対に駄目だ」
「ここに来るまで何があった?」
「実は壱東が……」
ひろお兄ちゃんが鞠家さんに車中でのやり取りを話せば日が暮れてしまうと、かいつまんで説明すると、鞠家さんの目が点になった。
私は妻に捨てられたなんの取り柄もないただの年寄りです。誰も相手にしてくれない。そう思っていましたが、根岸さんと伊澤さんを見て、恥ずかしいですが、最後にもう一度だけ人を好きになりたい、恋をしたいと思うようになりました。出来れば橘さんみたいな人と恋がしたいです。
「ままたんは相変わらずモテモテだな」
「まさかそう来るとは思わなかったから驚いた」
「橘、今ごろくしゃみをしているぞ」
「そうだな」
ひろお兄ちゃんと鞠家さんが顔を見合わせるなりぷぷっと笑い出した。
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