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番外編白雪夫妻
「もしかしてそちらの殿方が未知さんのお兄さんかしら?」
「はい、そうです」
「初めまして。卯月裕貴です。彼は私の妻の心です。妹がいつもお世話になっています」
「初めまして、卯月心です」
ひろお兄ちゃんと心さんがぺこっと頭を下げた。
「なんて可愛らしい。とても素敵なご夫婦ね。白雪です」
社交的なハツさんに対し義夫さんはお祖父ちゃんみたいなタイプで寡黙で口数が少ない。
「挨拶くらいすればいいのに。ごめんなさいね。うちの主人昔気質だから」
「いいえ、気にしていません」
ひろお兄ちゃんが笑顔で答えた。
ひろお兄ちゃんと義夫さんは一切言葉を交わさず腕を前で組み向かいあってソファーに座っていた。
「失礼なことを聞くが弓削どはどういう関係なんだ?」
「了慧 くん……了慧くんというのは弓削さんの下の名前なのよ。了慧くんの亡くなった祖父母といとこになるのよ」
「余計なことを喋るな」
「余計なことじゃないでしょう。お客さんの相手をしてって頼んだのに、お茶も出してくれないんだもの」
「煩いな。儂は忙しいんだ」
むすっとして立ち上がると新聞を持ったまま奥の部屋に向かった。
「 詐欺じゃないかと疑うコンビニの店員に、これは絶対に息子の声だ。俺が聞き間違えるわけがないって全然聞く耳を持ってくれなくてね。そのとき声を掛けてくれたのが了慧くんだった。たまげたわよ。あんなに小さかった了慧くんがいつの間にか大人になって立っているんだもの。助けられたのは私たちのほうなのよ」
「弓削らしいな」
ひろお兄ちゃんがくすっと笑った。
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