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番外編白雪夫妻

「だから言ったのに」 「ほら、茶だ」 青空さんがお茶を飲ませようとしたけど義夫さんはそれを拒み手で払った。ガシャーンと派手な音がして湯呑み茶碗が粉々に割れた。 「姐さんはそこから動かないで」 「俺らに任せろ」 椅子から下りようとしたら蜂谷さんと鞠家さんの声が飛んできた。 「心、きみもだ」 ひろお兄ちゃんが割れた湯呑み茶碗を片付けようとした心さんを止めた。 「信じてはもらえないが弓削はあなた方を本当に心配している。弓削の一番弟子であるヤスに聞いたら分かることだ。借金を抱えその日暮らしだったあなた方を頼るわけにはいかない。ガキだった弓削が手のかかる幼い久弥を育てながら二人で生きていくためにはヤクザになるしかなかった」 ひろお兄ちゃんがお茶をずずっと啜った。 「何があったかは知らないが、卯月は弓削が心底惚れている妹の旦那だ。卯月を信用することが出来ないというなら俺たちもあなた方を信用することは出来ない」 蜂谷さんと鞠家さんが手分けしてあっという間に割れた湯呑み茶碗を片付けてくれた。 「悩み事があるなら聞く。二人で抱え込むな。これも何かの縁だ。悪いようにはしない。兄貴にそう言われたんじゃないか?」 ひろお兄ちゃんが床に落ちていた馬券を拾うと義夫さんの前に置いた。

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