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番外編白雪夫妻
「心、未知、飯を食べに行こう。ハツさん定休日なのに妹のために店を開けてくれてありがとう。世話になった」
ひろお兄ちゃんが財布からお金を取り出そうとしたら、
「卯月さんからカット代はもらっています。いただく訳にはいきません」
ハツさんがあわてて首を横に振った。
「裕貴さんもその……卯月さんと同じヤクザなんですか?」
「どうしてそう思った?」
「卯月さんと同じ目をしているので……」
義夫さんをチラチラと見ながら、ハツさんが気まずそうに返した。
「東京にある龍一家という組の組長をしている」
「龍一家?どこかで聞いたような……」
「東日本最大の勢力を誇る昇龍会の直参だ。卯月さんもあんたもずいぶんと若いのに組長か。いいご身分だこと」
義夫さんが嫌悪感を露にした。
「卯月は本部の若頭も兼務している」
「了慧くんはそんなすごいかたのもとで働いているんですね」
「あぁ、そうだ」
「鼻が高いわ~~」
ハツさんがぱちんと両手を叩いた。
「呑気だなお前は」
お茶を飲みながら義夫さんがやれやれと大きなため息をついた。
ひろお兄ちゃんが壁に飾ってある写真に気付いた。なるほどね。独り言を口にするとほくそ笑みを浮かべた。
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