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番外編弓削さんに会いたいな
「友人に騙されて多額の借金を背負い自己破産した夫婦がどうしたら年に何回も海外旅行に行けるんだ?豪華列車で行く日本一周の旅、一人100万はする。二人だから200万か。それに裏通りに面しているとはいえ駅前の一等地。家賃だってそれなりにするはずだ」
ひろお兄ちゃんが立ち止まり雑居ビルを見上げた。
「オヤジもそのことに気付いていた」
「なるほどな。だから未知の付き添いで俺が二人に会うように仕向けたんだな」
「そうだ。確信がなかったからな」
鞠家さんと蜂谷さんとそんな会話を交わしていたら、
「未知さん待って!」
久弥さんが森崎さんと一緒に走ってきた。
「置いてきぼりするなんてひどいです。台所で洗い物をしていて気付いたら誰もいなくなっているんだもの」
「それは悪かったな」
蜂谷さんが謝りながら頭を掻いた。
「絶対に悪いとは思っていないくせに」
「悪いとは思っているぞ」
「じゃあ、なんで笑っているんですか?」
蜂谷さんに食って掛かる久弥さん。やはり兄弟。怒った顔が弓削さんにそっくりだ。
「弓削さんに会いたいな……元気なのかな……」
雲一つない青空を見上げてポツンと呟くと、
「弓削も未知とヤスに会いたがっていたよ。元気をだして」
心さんに励まされてしまった。
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