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番外編ランチ会

「菱沼組の若い人たちはな、詐欺に遭いそうになっていた年寄りを助けてくれたんだ」 「昨日なんか押し車が側溝にはまって動けなくなった年寄りを助けていた」 「この前なんか、横断歩道でなかなか車が止まらなくて渡れなかった黄色い帽子を被った女の子がいたんだが、手を挙げてるのが見えねぇのか。止まるのがルールだろう、とドライバーを一喝してくれて車をとめてくれたんだ」 「毎朝事務所のまわりのゴミ拾いをしているんだ。おはようございますと頭を下げて挨拶をくれるから、朝から清々しい気持ちになるんだ」 おじいちゃんたちがここぞとばかりに若い衆たちの自慢話をはじめた。本人たちに聞かせてあげたいと思ったら、蜂谷さんがスマホで録音していた。 「うちの若い衆もなかなかやるじゃねぇか」 鞠家さんも嬉しそうに顔を綻ばせていた。 居づらくなったのか、男性たちがテーブルにお金を置くと、そそくさと逃げるように店から出ていった。 「肝を冷やしたぞ。相手はヤクザだ。頼むからあまり無茶をしないでくれ」 蜂谷さんが声を掛けると、 「茨木さんにいつも世話になってるからな」 「老い先短い年寄りだが、儂にも出来ることはある」 なんとも心強い答えが返ってきた。

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