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番外編命だけは粗末にするなよ
信号機が青に変わり右、左、右と確認してから横断歩道を渡ろうとしたら、
「きゃぁーー!!」
女性の悲鳴が聞こえてきた。通行人が何事かと立ち止まりあちこちキョロキョロと見ていた。
「姐さん立ち止まらず、先に進みましょう」
鞠家さんに手首を掴まれ、そのまま引っ張られた。
「鞠家さん待って。宋さんに何かあったかも知れない」
「若林を残し先に逝くような、そんな薄情な男ではない」
「未知、鞠家の言う通りだ。もしこの状況で車が突っ込んできたら一貫の終わりだ。関係のない一般人まで巻き込んでしまうことになる。心、きみもだ」
ひろお兄ちゃんが繋いでいた心さんの手を引っ張った。
「若井に恨みをもつ者は多い。ヤクザに難癖をつけられて絡まれている。身内がヤクザに連れていかれた。すぐに助けて!市民からのSOSにも、事件でなければ動けません。すぐに動いてくれれば、もしかしたら尊い命が奪われることもなかったのにという事件がつい最近あったばかりだ」
「若井は部下に責任を転嫁し、自分は知らぬ存ぜぬだ。被害者遺族から恨まれて当然だ」
蜂谷さんと青空さんが鋭い視線を周囲に向けていた。信号待ちをしている車の長い列に不審な動きをしているドライバーがいないか確認しているようだった。
森崎さんも恥ずかしがる久弥さんに緊急事態だからと言って手を繋ぎ、一緒に横断歩道を渡っていた。
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