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番外編命だけは粗末にするなよ
「これからも兄貴を頼むな」
「任せておけ。裕貴、何か一つ忘れてないか?」
「いや、何も忘れていないぞ」
「肝心なことを忘れているだろう」
「肝心なことと言われてもな……」
首を傾げるひろお兄ちゃん。
「あ、そうだ。鞠家、未知を……大事な妹と甥っ子姪っ子と奏音と柚の子どもたちを頼むな。離れているから何かあってもすぐに駆け付けることが出来ない。鞠家と蜂谷と青空と森崎。君らが頼りだ」
「姐さんは俺達の癒しだからな。任せておけ」
一番聞きたかった言葉を聞けて鞠家さんは満足そうに微笑んだ。
「兄貴といい鞠家といい、ますます過保護になってないか?気のせいか?」
「気のせいだろ。俺は婿として姐さんのことが心配なだけだ」
「そうだったな。婿殿だったな」
「そういう裕貴のほうこそ姐さんに対する過保護とシスコンがますますパワーアップしてないか?」
「だって兄貴が好きなくらい未知も好きで好きでたまらない。こればかりはしょうがない。心も諦めているよ」
「いちいち焼きもちを妬いてもいられないしな」
「そういうことだ」
鞠家さんとひろお兄ちゃんが何かに気付き後ろを振り返った。
「今日は朝からやけに客人が多いんだ。オヤジがいないときに限っていつもこうだ。今度はなんだ。夫婦喧嘩の仲裁か、ご近所トラブルの相談か、人探しか。うちは交番じゃないぞ。ヤクザの組事務所だぞ。参ったな」
鞠家さんがはぁ~~とため息をついた。
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