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番外編命だけは粗末にするなよ

赤い巾着を持ち腰が曲がったお婆ちゃんが慌てた様子で立っていた。鈴木さんなじょした?なんかあったかい?声を掛ける鞠家さんと蜂谷さん。お婆ちゃんと顔見知りみたいだった。 「孫が、孫が……」 すっかり気が動転し呂律が回らないお婆ちゃん。尋常じゃないその様子からぴんときた二人。まずはお婆ちゃんを落ち着かせ、それから何があったのかじっくりと話しを聞いた。 「宋のストーカー、もしかしたら受け子かも知れない。鈴木さんは痴呆症を患っている。孫から友人に騙されてサラ金の連帯保証人になってしまった。今日中に金を用意しないとヤクザに殺される。助けてと電話があったそうだ」 鞠家さんがスマホを耳にあてた。 「どこに連絡をするんだ?」 「鈴木さんの本物の孫だ。鈴木さんは半年前にも同じような手口で金を騙し取られている。裕貴、姐さんを頼んだ」 エントランスの前にワゴン車が静かに滑り込んできた。 「姐さん、オヤジと子どもたちが待っています。あとのことは俺らに任せて下さい」 「でも……」 お婆ちゃんのことが心配でちらっと見た。巾着から通帳と印鑑を取り出すと、これをやるから孫を助けて下さいと何度も鞠家さんたちに縋りついていた。 子どもたちが待っている。陽葵もお腹を空かせて泣いている。後ろ髪を引かれる思いで車に乗り込んだ。

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