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番外編二人はお似合い
「久弥、オヤジが呼んでるぞ」
森崎さんがぬっと顔を出したものだから、
「わ、わ!」
久弥さんが驚いてオーブントースターの皿を落とした。
「俺がいきなり声を掛けたからだな。驚かせるつもりはなかったんだ。ごめんな。久弥、素手で触るなよ。やげばだでもしたら大変だ」
「やげばだって」
久弥さんがぷぷっとふきだした。
「森崎さんまで訛ってるから」
「やげばだって普通に言うだろ?」
「やげばだは福島の方言だよ。使うのはうちの兄ちゃんくらいだよ」
「そうなのか?俺てっきり標準語だと思っていた」
「森崎さんって面白い」
こんなにも楽しそうに笑う久弥さんの顔を初めて見たかも知れない。
「一太くん、奏音くん、出来たピザを居間に運んでくれるかな?火傷しないようにゆっくりでいいからね」
「はい」
「まかせて」
遥香と幸ちゃんと優真くんがつぶらな瞳をうるうるさせて久弥さんを見上げた。
「ひーにいに、ハルちゃんは?」
「みゆちゃんは?」
「ゆうくん」
「じゃあハルちゃんとみゆちゃんはコップを運んでください。優真くんは台拭きを持っていって下さい。七海さんがいるから一緒にテーブルをきれい、きれいしてください」
「はぁ~~い」
「わかった」
小さな手が五つ上がった。
「たいくんとここちゃんはお兄ちゃんたちの邪魔をしないという大切なお手伝いがあります」
橘さんが太惺を抱っこしてくれて、僕は心望を抱き上げようとしたら、腰に痛みが走った。
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