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番外編鞠家さんありがとう

久弥さんの怯えたような顔に、とんと胸を小突かれたような恐怖を感じた。 「白雪さん夫婦に何度も会っているのに何で今の今まで気付かなかったんだろう」 「久弥は悪くない。気付かなかった俺も悪い。人は見た目で判断するな。真実は笑顔の下にこそ隠されている。卯月の言う通りだった。恐れ入った」 「兄貴は気付いていたのか?」 ひろお兄ちゃんがじっと彼を見つめた。 「確信はなかったがな。弓削がしきりに目のことをばかり言うから、気にはなっていたんだ。喉に刺さった小骨がこれでようやく取れる。なぁ裕貴、誉はいったい何者なんだ?本当に先々代の甥なのか?誉が先々代の隠し子という可能性はないのか?」 「実を言うと俺も誉のことはよく知らないんだ。先々代は天上天下唯我独尊だったから、身内には嫌われ、敵も多かった。腹上死するくらいだから隠し子がいてもおかしくない」 「白雪夫婦は七十代だ。息子の他に娘がいたとして四十代後半。誉は二十六歳だ。辻褄が合うな」 彼とひろお兄ちゃんを話を聞いていた柚原さんが何かを思い出したみたいで、スマホを取り出すと誰かに連絡を取っていた。

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