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番外編子煩悩な国井さん
紫さんが何かを言い掛けた時、
「呼んだか?呼んだろ?」
宋さんがいつもの宋さんの姿で戻ってきた。
「呼んでないぞ」
「そうか?宋さんも女装すると可愛いと紫の声が聞こえだぞ」
「宋、年上の人を呼び捨てにしない。何度言ったら分かるんだ」
「何か言ったか?聞こえない」
「あのな……」
都合の悪いことになるとすぐにすっとぼける宋さんに注意したくても注意することが出来なくて。さすがの彼もため息しか出ない。そんな感じだった。
「それはそうと紫。何か気になることがあるのか?」
「度会に挨拶しに来た誉さんと廊下ですれ違ったの。挨拶をしたけれど無視されて馬鹿にするように鼻で笑われたわ。度会もあまりいい印象を持たなかったみたいよ。同じ本部の人間とはいえ千里さんとはえらい違いよね。千里さんは未知さんと同じように幹部から部屋住みの若い衆たちにも挨拶をしたり話し掛けてくれるもの。あら、やだ。私としたことが……。話しがすっかり逸れてしまったわね」
ふふふと紫さんが笑った。
「誰かに似てるのよね。年のせいかしらなかなか思い出せなくてね。誰だっけ?」
不思議そうに首を傾げながら、とりあえず洗濯物を干してくるわね、そう言って庭へと向かった。
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