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番外編真山さんの新しい彼女
真山さんが連れてきたのは鈴木さんのお孫さんだけではなかった。
「渋川にフラれ、自暴自棄になっていたとはいえ、女を見る目がないのか、真山は……」
彼がため息をついた。
真山さんの新しい彼女は橋本さんという名前で同じ児童養護施設で育ったみたい。二十歳だから真山さんとは五歳離れている。未婚のまま男の赤ちゃんを産んで、真山さんのところに転がり込みそのまま同棲をはじめた。
「橋本はいまだに自分を好きでいる真山の気持ちを利用したんだ。橋本はまゆこと同じサイコパスの目をしている。とんでもない悪女《ワル》だ」
「恋は盲目だとよくいうが、まさにその通りだな」
彼とひろお兄ちゃんがみんなに赤ちゃんを自慢気に見せて歩く真山さんを心配そうに見つめた。
「未知、聡太だ。可愛いだろ?」
真山さんの腕のなかには陽葵と月齢がさほど変わらない男の赤ちゃんがいた。爪で引っ掻いたのかな?顔が傷だらけになっていた。よく見ると爪がかなり伸びていた。
「真山さん、ミトンをつけてあげたらどうですか?」
「ミトン?なんだそれ」
「これだ」
彼が陽葵が普段使っているミトンを真山さんに見せてくれた。
「それと爪くらい切ってやれ。可愛い顔が傷だらけだろ?たく、しょうがねな。しっかり抱っこしてろよ」
彼がポケットから取り出したのは陽葵用のはさみの爪切りだった。なんでそんな物まで持ってるの?驚いた。
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