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番外編災いの、連鎖

「女はN総合病院で看護助手として働いていた。名前は樋口。未知が顔を覚えていた。斉木先生に確認したら三ヶ月前まで内科病棟で働いていた」 「辞めた理由はなんですか?」 「担当していた高齢の患者とねんごろな関係になり内縁関係になった。それも一回や二回じゃない。女と関わりのある男はみな不審な死にかたをしている。久弥、義夫について教えてくれないか?」 「おじちゃん、兄ちゃんにだけはいつも冷たいし、素っ気ない。それでも兄ちゃんはおじちゃんのことを心配して、上京するまえにおじちゃんに会ってあの女だけは止せと忠告していた。ハツさんを大事にしてくれと頼み込んでいた。おじちゃんが兄ちゃんを毛嫌いする理由は、大嫌いなヤクザになったからだと思っていたけど、おじちゃんは怖かったのかもしれない。ずっとひた隠しにしてきた秘密を兄ちゃんに暴かれるのが」 久弥さんがお茶を啜った。 「弓削に過去に何があったと聞くのが手っ取り早いが、本人はいない。久弥なら何か聞いてないかと思ってな。悪かったな、呼び止めて」 「悪くないです。卯月さんのお役に立てるなら何でも聞いてください」 目をキラキラと輝かせる久弥さんを見て、彼がクスリと笑った。 「やっぱ弓削にそっくりだな、久弥、決して強制するつもりはないが、兄ちゃんが帰ってきてもここにいてくれ。側にいて欲しい。二人がいれば心強い」 彼の言葉に久弥さんが驚いたように目を丸くしていた。

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