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番外編俺は秦青空。それでいいそれでいい
「蜂谷さん、ふつう子どもが行方不明になれば事件と事故、両方の可能性を考えて捜査しますよね?」
蜂谷さんと青空さんの前に湯呑み茶碗をおいた。
「姐さんすみません。中には複雑な事情を抱え、出生届を出していない親もいる。青空の親を探すためサツが青空の現在の写真と十歳前後の写真を公開したのに情報が何ひとつ集まってこない。絶対に変だろ?推定五歳までは日本で生きていたんだ。生活もしていた。にも関わらず誰ひとり青空のことを知らないなんて絶対におかしいだろ?」
「ハチ、そう熱くなるな」
青空さんが蜂谷さんの頭に手を置くとぽんぽんと優しく撫でた。
「俺は秦青空のままでいい。本当の名前も親も何一つ覚えていないんだ。知らないままでいい。知らないほうが幸せとよくいうだろ?」
「青空は知りたくはないのか?」
「別にいい。だって今が幸せだから。ハチ、ふーふーしてくれ」
「このくらい自分で出来ないのか?」
「出来ない。だって甘えたい年頃なんだ」
「五歳か七歳くらいでストップしているもんな」
しょうがないなと口では言いながらも甲斐甲斐しく青空さんの世話をする蜂谷さん。かき氷を家族で食べた記憶と、熱い飲み物をお母さんに冷ましてもらった記憶。少しずつだけど昔のことを思い出しているみたいだった。
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