2993 / 3588
番外編片山の野良犬ども
「片山の野良犬ども……白雪義夫はそう言った」
片山組は組長が人殺しの濡れ衣を着せられ、解散に追い込まれた。そのあと一人娘の紫さんが度会さんと立ち上げたのがこの菱沼組だ。
「白雪はよっぽど焦っていたんだろ?つい本音が漏れたな白雪はヤクザを毛嫌いしている。というか、勘繰られるとよほど困ることがあるんだろうよ。そういえば久弥は?大丈夫か?」
「動揺してしばらく固まっていた。久弥はうぶだからな、少し刺激が強すぎたかもな」
ふふっと伊澤さんが思い出し笑いをした。
「親戚のいい年したおっちゃんが、カミさんが意識不明の重体なのに、二十歳も年下の若いねぇちゃんを病室に連れ込んで朝っぱらから盛り上がっているんだ。かなりの衝撃だったはずだ」
ゆきうさぎ丸と書かれた緑色のエプロンを着たヤスさんがひょっこりと現れ、彼に大根とキャベツを渡した。
「実は、何回か見てはいるんだなよな」
「そうなのか?」
「街中に住んでいても買い物難民のお年寄りは意外と多い。だから二週間に一回、白雪美容室近くの住宅街をうすらかすらしているんだ。腕を組んでずいぶんと仲のいい父娘だなと見てはいたんだがやはりそういう関係だったか」
ヤスさんがそこで言葉を止めるとスマホを操作し彼に写真を見せた。
ともだちにシェアしよう!