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番外編片山の野良犬ども
「これは美人の類いに入るのか?」
「真面目な顔で何を言い出すかと思ったら。とんちんかんなことを聞きますね」
「俺は未知を基準にして……ーー」
「はい、はい。未知さんしか眼中にないから美人の基準が何か分からないと言いたいのでしょう?」
「なんで分かったんだ?」
「おおかたそう来るだろうと予想はしていました」
橘さんがハツさんの手紙をスマホで撮影しひろお兄ちゃんに送信した。
「ネット保険は既往症があっても80歳までならスマホひとつで簡単に申し込めますし何よりも掛け金が手頃というメリットがある反面デメリットもあるとことをちゃんと理解したうえで申し込まないとあとで痛い目にあいます」
「橘さん、複数の保険に入っていたということは掛け金だってそれなりの額になりますよね?美容室を借りている家賃だって裏通りとはいえ駅前の一等地です。1ヶ月最低でも10万は掛かりますよね?」
「そうですね。どこからそのお金が出ているのか。本当に不思議です」
ハツさんは自分名義の預貯金すべてを甥である弓削さんに相続させると遺言書をある弁護士に預けていたことが判明した。義夫さんはまだ知らない。ハツさんの依頼を受けたその弁護士が保険金の受取人を義夫さんから相続人に指名した弓削さんに変えたことを。ハツさんが亡くなっても、保険金はびた一文義夫さんにはお金が入らないことを。
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