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番外編彼のお祖父さん

「あなたはやはり識琉《さとる》さんによく似てる。罪を憎んで人を憎まず。女と子どもを泣かせるヤツは許さねぇ。腐ったその性根を叩き直してやる。昔気質の男で、気難しくて無口で、面倒くさいが口癖で。でも、なんだかん――だ言いながらも面倒をみてくれた」 「祖父を知っているのか?」 「私がこうして生きているのは識琉さんのお陰と言っても過言ではない。命の恩人だ。会いたいと思った時に会えなくて、最期も看取れなかった。卯月さん、私に恩返しをさせてはもらえないか? 遺恨を残したままでは死んでもきれにきれない。あの世で識琉さんに会わせる顔がない」 「俺でいいのか?父の上総は岳温泉で悠々自適の田舎暮らしをしているぞ」 チラリと阿部さんを見る彼。 「意地悪な質問だったな」 「そんなことはありません」 阿部さんが首を横に振った。 「青空さん、私に出来ることならなんでもする。だから何でも相談して欲しい」 「初めて会った人はこれを見てたいがい驚く。驚かない。珍しいな」 青空さんが腕の髑髏の刺青を阿部さんに見せた。 「これでも驚いている。緊張しているし……ほら」 汗でびっしょり濡れた両手を広げて見せてくれた。

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