3019 / 3588
番外編悔やんでも悔やみきれないこと
ー五分と待てないのが縣一家だ。駅に迎えに行けばいいんだろ?客人の相手は任せてくれ。兄弟仲直りさせるには少しの荒療治は必要だが、それで本当に仲直り出来るものなのかー
「何事もやってみないと分からないだろ?」
ーそれもそうだがー
電話の相手は根岸さんだ。
明日来る予定だったけど、譲治に会ってもいいかなと達治さんがつい本音を漏らしたみたいで、気が変わらないうちにと新幹線に飛び乗ったみたいだった。
亜優さんは布団に潜ってしまい、こんもりと山が出来ていた。
来るのはコウジさんと達治さんだよ。森崎さんに頼んで通訳をしてもらったけど、僕は信じないよと亜優さん。すごく嫌な予感がする。寒気がすると布団を頭から被ってしまった。
「仮病じゃなく、風邪のひきはじめかも知れませんね。ゆっくり休ませてあげてください」
橘さんがクスクスと笑いながら風邪薬と氷嚢と体温計を枕元に置いていってくれた。
「黒のジャケットにアロハシャツ。リュックサックを背負いデカイスーツケースを二つ転がしている目付きの悪い男が改札口にいて、なんだコイツ。ガンを飛ばしやがって。喧嘩を売ってんのかとコウジがぽきぽきと指の関節を鳴らしながら大股で近付いていったんだ」
ふふと彼が思い出し笑いを浮かべた。
「根岸がコウジを止めた。まわりを見ろと」
不審物を持った怪しい挙動不審な男がいると駅員からの通報を受けた駅前交番のお巡りさんが駆けつけ構内は一時騒然となった。
ともだちにシェアしよう!