3025 / 3587
番外編孝行息子たち
「二人とも上手だね。虫がいるかもしれないから、そのまま食べちゃ駄目だよ」
「ママの言う通りだ」
「佐治さん」驚いた。
「ヤス兄貴にとうもろこしの皮をむくように言われたので手伝います」
あぐらをかいて座ると真ん中に太惺を座らせて一緒にむきはじめた。
「心望はママと一緒にむこうね」
「いやぁ~~いいですね。姐さんと子どもたちと、至福のひとときとはこのことを言うんでしょうね。オヤジが羨ましい」
「佐治さんは好きな方とかいないですか?佐治さんみたいにカッコいい男の人、世の女性がほっとかないと思うんです」
「彼女は絶賛募集中です。付き合うなら姐さんみたいな人と決めているので。でもその前に弓削兄貴とヤス兄貴をくっつけないと」
「カシラの態度が気になったんだ」
「どういうことだ?」
「遥琉兄貴が鈴木太郎と仮名で呼んでいる男。本当の名前は鈴木律だ。初対面にも関わらず律の顔を見て驚いていた。律は自分のことは何も話したがらないから俺も聞かないようにしていた。でも睦言で親はバス事故で亡くなり祖母に育てられたと一回だけ話してくれた」
「渋川、余計な世話かも知れないが閨事はほどほどしたらどうだ?若い衆の手本となるべき若頭と若頭補佐が朝から晩まで若いイロと部屋に籠もりっきりで風紀が乱れる一方だと宇賀神が嘆いていたぞ。真山をはじめとする将来の幹部候補の若いのが組に見切りをつけて次から次にやめている。異常事態だと思わないのか?」
渋川さんは返す言葉がなく押し黙ってしまった。
鈴木さんはドアに寄り掛かり渋川さんに新しく買ってもらったスマホを片手で弄っていた。
ともだちにシェアしよう!