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番外編孝行息子たち

「閨事よりまずは基本中の基本である挨拶と話しを聞く態度を彼に教えてやれ。渋川、もういい。帰れ」 組事務所に来た時から挨拶は一切なし。目も合わせようとしない。ずっとスマホを弄っている。いまどきの若者はこうなのか、彼もほとほと困ってしまった。 「ババァ何すんだ!」 「あら喋れるのね。それに私はババァという名前ではありませんよ」 鈴木さんのスマホをすっと取り上げたのは紫さんだった。 「あら~~綺麗な女性ね」 「返せ。人のスマホを勝手に見んなよ」 「人のって名義は渋川のでしょ?」 紫さんが鈴木さんを睨み付けた。 「律」渋川さんが慌てて立ち上がると鈴木さんの頭に手を置いて強引に頭を下げさせた。 「度会さんすみません」 紫さんの後ろに度会さんがいることに気付き青くなっていた。 「無銭飲食、暴行罪、器物損壊、公務執行妨害。このまま送検されて起訴されてもおかしくなかったんだぞ。誰のお蔭でシャバに出れたか胸に手をあててよく考えろ」 鈴木さんはケラケラと他人事のように笑っていた。 「お婆ちゃんが雨の日も炎天下の日も毎日サツに通い続け土下座して謝ったんだぞ。ネットニュースでたまたまそれを見ていた関西に住む娘家族がお婆ちゃんを引き取って面倒をみてもいいと言ってくれた。鈴木、渋川のところでこのまま自堕落な生活を送るか、関西で心機一転やり直すか、決めるのはお前だ。無理強いはしない。紫行くぞ」 度会さんたちは渋川さんが到着していると聞いて真っ先に挨拶をしにきたみたいだった。譲治さんが待っているからとすぐに移動した。 「元デカの勘だが」と前置きした上で伊澤さんが、 「鈴木、婆ちゃんを連れて関西に行け。槙島と関わらないほうがいい」 と忠告した。

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