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番外編孝行息子たち

「渋川と離れたくない。渋川は?」 渋川さんに抱き付き目を潤ませて見つめる鈴木さん。 「体の相性も最高だし、顔も俺好みで、律は一度教えればすぐに覚えるから教え甲斐がある」 頭を撫でる渋川さん。 「真山よりボクのほうが何倍も可愛いし、全部いいって言ってくれたよね?」 媚びるように猫なで声になるとすりすりと頬を胸元に擦り付けた。 「本当は渋川に会いたかった。寂しかった。真山に置いてきぼりされて、下にいる人たちに助けを求めても門前払いだよ。信じられる?酷くない?」 「あぁ、そうだな」 鈴木さんの背中を擦り、よしよしと宥めていた渋川さんの手が止まった。他所の組に喧嘩を吹っ掛けておいて。馬鹿馬鹿しくて見ていられないと彼が先に席を立ち、それを合図にみな一斉にいなくなった。気付いたら二人きりになっていた。 鈴木さんは最初から渋川さんと二人きりになるように仕組んでいたのかも知れない。渋川は自分を愛している。自分しか見ていないと自惚れていた。ほくそ笑みを浮かべた鈴木さんを渋川さんが見逃すわけなどなく。 「俺は卯月の兄貴が一番好きだ。尊敬できるし信頼できる。男の中の男だ。律のことはもちろん愛している。だからこうして迎えに来てやっただろう。でもな」 怪訝そうな目を向けられ、鈴木さんがぎくっとした。

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