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番外編孝行息子たち

「渋川さんは弱冠三十歳にして組のナンバー3です。宇賀神さんの息子でも親戚でもない。実力だけで今の地位までのしあがりました。渋川さんをあまり甘く見ると痛い目にあいます。普段私たちに見せている顔は猫を被っている顔です」 若頭の槇島さんでさえ四十歳で若頭補佐になった。五十代、六十代の古参の幹部がいるなかで渋川さんは異例のスピード出世を果たした。 「鈴木さんしか眼中にないって彼が……」 「渋川さんが昔から好きなのは遥琉です。遥琉は唯一無二の兄貴であり、尊敬できる男の中の男。だから遥琉の真似事ばかりしています。髪型も同じ、服と靴は同じブランドのモノです」 彼しか見てないから、彼以外の男性にはあまり興味がないから、そこまでよくは見てなかったけど、よくよく思い出したら橘さんの言う通りかもしれない。無意識のうちに後ろに体をひいたら、 「未知さんだけでなく誰だってドン引きします。信孝さんと鉢合わせをさせないよう、幹部一同みなヒヤヒヤしています。もし鈴木さんがうっかり遥琉に対する悪口を一言でも言ったら、いくら鈴木さんを愛しているとはいえ、渋川さんの頭に角が二本にょきにょきと生えます」 もしそこに信孝さんが現れたら……。ひろお兄ちゃんと彼を取り合い喧嘩になったときのことを思い出しいてもたってもいられずナオさんに電話をかけた。

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