3030 / 3587
番外編孝行息子たち
「亜優は可愛いな。見てて飽きないよ。あ、そうだ」
玲士さんがポケットから小さな箱を取り出した。
「身構えなくても指輪とかじゃないから。もしかしてまだ疑っているか?」
大きく頷く亜優さん。
「亜優に信用してもらえるように、これからますます頑張らないとな」
玲士さんが箱の中から取り出したのは時計だった。
「壊れたって聞いてな。これは安物だから」
玲士さんが亜優さんの右手首に付けていた時計を外すと、新しい時計と交換してくれた。
「地竜からプレゼントされた大事なものだろ?直せるか分からないが借りててもいいか?」
亜優さんがコクりと頷いた。
「亜優の指、細くて長いな。サイズはどのくらいだ?」
然り気無く指のサイズを図る玲士さん。
亜優さんはきょとんとしてされるがままになっていた。
安物だからと玲士さんは言ってたけど橘さんに聞いたらそれなりに値の張るものだと教えてもらった。
「コウジからの呼び出しだ。亜優、待っててな。すぐに帰ってくるから」
スマホを確認すると急ぎ足で組事務所に戻っていった。
玲士さん、ハンマーで時計を叩き割ろうとしてコウジさんに止められたのはここだけの話し。
壊れた時計は彼が預かり、駅前通りにある馴染みの時計屋に修理に出した。年代物のかなり古い時計みたいで、こんなのよく持っていたなと逆に驚かれたみたいだった。
ともだちにシェアしよう!