｢石山に何を命じられた？」 ｢なんのこと？」 ｢惚けるな。石山の配下とひそかに連絡を取り合っていたことに俺が気付かないとでも思ったか？」 渋川さんは律さんがひそかに連絡を取り合っていた女友達が石山のイロの一人だと見破っていた。 彼も律さんを幹部に命じそれとなく監視させていた。 ｢渋川に謀反の疑いあり。妙な動きをするときは殺せーーとでも命じられたか？鈴木のおばあちゃんは痴ほう症がだいぶ進んでいるが、ひ孫がいつの間に別人になっていたことに気付いていたぞ。じゃらじゃらとピアスやアクセサリーをつけすぎなんだ。だからバレたんじゃないか？人を騙すならもうちょっと上手くやったらどうだ？」 矢継ぎ早に痛いところをつかれ、はじめこそ余裕ぶっていた律さんだったけど、次第に追い詰められ余裕をなくしていった。 「関西に妹がいるは嘘だったのか」 「そうだ。実際は関東だ」 「いつから気付いてたの？」 「律が誉と同じ匂いがすると遥琉兄貴に言われて、そこからきみを疑うようになった。男がはじめてのわりには慣れていると、真山も違和感を感じていた」 律さんはきょろきょろとあたりを見回した。逃げ道を探しているようだった。 「石山は九鬼と同じだ。利用されるだけ利用され不要になったらゴミのように捨てられる。律、俺が言うのもなんだが石山より渋川のほうが大事にしてもらえる」